ドラマ 「春さらば」

Thu.Mar.26.2009

[ハイサーイ!私の徒然草]

 ドラマの副題にある介護詐欺女といえばあまりいい響きはないけれど、主人公の女介護士(夏川結衣)は根っからの悪人ではない。親から家を追われて、"逃げた男"の子を産み、夜の仕事もしたが子のために止め、介護士になる。年収は250万円で生活は苦しい。介護詐欺に手を染める。

 お年寄りの娘になり切って誠心誠意尽くす。お年寄りの話に心から耳を傾ける、心の通じあう話し相手になる。お年寄りたちはこの介護士に死ぬまで世話になりたいという。

 あるおばあちゃんは同居する家族を全く信用していない。こういう時代は金(きん)が一番安全だという介護士に、金を買ってくれるよう、家族に内緒で自分の隠し持っていた180万円を渡した。

 またあるおじいちゃんには子がいるが、子は困った時以外は寄り付かない。このおじいちゃんは会社倒産のとき、妻子を債務から守るために離縁した。母親がその後亡くなった。子は父親を恨んだ。会社倒産のときに隠しておいた大金は墓場にもって行けるわけでもなし、子にやるくらいならドブに捨てるという。介護士はこのおじいちゃんにもっと役に立つ方法で使っては如何ですかと、介護施設への寄付のチラシを見せる。おじいちゃんは領収書もとらずに大金をこの介護士に預けた。

 店の資金繰りに困ったその息子がお金を借りに来るがおじいちゃんは貸さなかった。日頃寄り付きもしないのに、二度と来るなと追い返した。韓国ドラマを見ていても、それは当たり前のことである。子は店を自力で立て直した。困ったときに親の助けを受けた子は、困ったときに自分の力で立ち上がれなくなるという。


 また別の口のきけない画家のお年寄りは、親族や子はいるのに誰も寄り付かない。だから全財産をこの介護士に譲るという遺言状を残して突然倒れて亡くなった。生前にこの介護士の絵を描いていてプレゼントしていた。この画家のお年寄りが亡くなると、今まで寄り付きもしなかった親族が遺産相続を巡って集まって来る。遺産をもらうのは当然だと思っているらしい。虫のいいはなしである。遺留分すらありはすまい。このお年寄りがこの介護士に残した遺言状は有効だった。

 このお年寄りたちは介護士の倍も生きて、苦労をしてきているし、まるっきりだまされたわけではない。わかっていたという。それにお金にはあまり執着はなかった。財産を墓の中までもって行くわけにはいかない。これから先きもこの介護士に世話になれるのだったら安いものだと思っていたという。

 どう決着するのかと思っていたら、お年寄りの訴えで介護士は警察に捕まる。そしてお年寄りたちはこうでもしなければあなたは今後も同じことを繰り返すに違いないと思ったと言った。お年寄りの話を聞いて涙した女はお金を返した。

 しかしお年寄りたちは、お金を返せばすむというものじゃない。償いとして今後私達が生きている限り、介護士として私達の世話をするということを約束しなさい。これからもあなたの世話になりたいと言った。

 この介護士の哲学は、今お年寄りが何をしてほしいか、お年寄りの身になって考え、話し相手となり、お世話をして、しあわせにして、その報酬としてお金をもらったのだという。詐欺には違いない。お金が目的でやさしさを演じていたのはたしかだが、心から尽くしていたことも間違いない。そんなことが現実にありうるのかどうかはわからないが、それがドラマである。原作者のメッセージである。

 この介護士も根っからの悪人ではなかった。お年寄りたちは、冷たい身内のことを考えれば、介護士が何も詐欺まがいのことをしなくても、全財産をはたいてでも、このくらいのお礼はしたいと思っていた。私だってそうしたかもしれない。介護士の報酬が少なすぎることも確かだし、現実が現実ですから、この介護士を詐欺とは言いたくはないですね。

 ふつうありえないことですよねえ、こんなことは。しかし、夏川結衣さんだからこそこの魅力的な介護士を演じられたのかもしれない。

 単なる事件ものではなくてほっとする決着だった。こういうドラマをどんどん作ってもらいたいものだ。