先生欠員 埋まらない

〜2011年1月10日の朝日新聞朝刊一面トップに「先生欠員 埋まらない」という記事が掲載された〜


Wed.Jan.12.2011
【ハイサーイ!私の徒然草】

 「教員の産休・育休・病気・介護休暇の時に代わりの教員が間に合わないケースが各地の公立小中学校に広がっている。全都道府県・政令都市で取材したところ、昨年度、全国で約800件にのぼった」

 「理科の教員の4月末からの病休に対して代わりの教員が間に合わず、穴が埋まったのは6月だった」とある。

 この就職氷河期になぜすぐに欠員が埋まらないのか。これは今にはじまったことではなくて、そういうケースが目立ってきたというだけのことだと思う。10年近くも以前からずっと変だと思っていた。

 私は2002年度の高校理科講師を希望して県教委名簿に登録していた。4月はじめから採用のこともあるが学期が始まってからの緊急の要請の方が多い。

 2000年、2001年、2002年と3年間に3校の常勤講師をつとめたけれども、そのうちの後の2校は本当に緊急時の助っ人だった。

 私は進学校から出発して、職業高校、定時制と、未経験の学校を意識的に希望して異動してきた。しかし、要請を受けたのはまたしても私が経験したことのない新しい種類の学校だった。新しい経験だと思って駆けつけた。

 2校とも欠員ができてから数日ないしは1週間以内に駆けつけている。それは健康診断だとか書類提出だとかの手続きに数日はかかるからです。1校は、手続きに入る前に電話を受けた翌日に駆けつけてすぐに対応した。

 普通高校であれ、職業高校であれ、全日であれ、定時制であれその範囲ならば、いろいろな学校を経験しているから対応しやすいけれども、1校目は仕事の内容が全然違う通信制だった。

 3日後には3000人もいる生徒の集中スクーリングがはじまるが、担当教師の突然の入院で引継ぎもなし、準備も全くできてない、しかも実験中心のスクーリングからはじまった。

 駆けつけたものの、話を聞いて、一瞬、こりゃどうにもならないと思ったほどだった。しかし学校の流れがあるから、どうにもならないでは済まない。レポートの添削・返送、コンピュータへの入力などすでに気が遠くなるほどの仕事がたまっているから、1日遅れればその分仕事はたまる一方だった。

 駆けつけたその日のうちに実験器具を全部洗い出して、足りない材料は近くの日曜大工の店で調達させてもらって自作し、10種類ほどの指導書も作り、何とかめどを付けることができてほっとした。

 翌日は実験室に器具を並べ、指導書通りに自分でやってみて、不都合がないかチェックし、不都合な部分を修正して、3日目から実験集中スクーリングがはじまった。

 何事もなかったかのように無事スクーリングが終わった。次ぎから次ぎに未経験の仕事が続く。朝は1時間前に一番に出勤し、帰りは夜8時9時まででも居残り、仕事は持ち帰って場合によっては徹夜もした。入院先生が復帰するまで全力投球だった。自分が講師であることを忘れていた。

 もうひとつは、高校講師を希望している私に、中学校から緊急要請があった。今この教員採用の枠が少ない時期に、中学校の理科講師希望者はいくらでもいるでしょう、どうして私なのですか。一応は断ったけれども、それが見つからないのです。何とかお願いできないかという。私は新しい経験に興味はあったので、私でよければとお受けした。

 今でもこの中学校からの要請には首を傾げている。後でわかったけれども、4月に新規採用になった若い先生が学期が始まってから突然退職したというのである。授業ははじまった、代わりの先生は八方手を尽くして探しても見つからない、わらをも掴む思いで高校講師志願者名簿の中から、いろいろな学校を経験している私なら勤まるのではないかと思われたのに違いなかった。しかし、代わりが見つからないなんて、この就職難の時期になぜ?と、これも理解できないことでした。

 県庁地下にあるクリニックに健康診断を受けに行った。普通、健康診断を受けにいった人に受付の看護師さんがこんなことを言うかしらとこれも思いがけないことだった。「あなたはよく講師の声がかかりましたね。今、志願者は多いけれども、採用がほとんどないんですよ。よほど・・・でしょう」と言われた。

 しかし、中学校に行ってみて、なるほどと思うことも多かった。どこに原因があるかはっきりしない。言うならば、校長がもっと指導力を発揮して学校を働きやすい職場にしなきゃあ、先生たちはせっかく組合があるのだから、愚痴ばかり言わずに、もっと仕事をしやすいように発言して、学校を変えていかなきゃあ、そのどちらかに原因があると私は思った。私は常勤講師だから闘う立場にはない。

 要するに、地域がすべき仕事まで学校に電話がかかってくる。午後7時でも8時でも校区内の近隣公園の遊具の落書き消しから、コンクリート壁の落書きを隠すためにペンキ塗りにかり出される。PTAもなかなか手強い。PTAの要請があれば無視できない。当然家庭がすべきところまで教師が出向いて世話をする。外部団体からの要請があれば夜の集会にもでなくてはならない。

 教師は多忙で職員会議にもなかなか時間通りに集まらない。仕事が多いかと言えば高校勤務の時の方が忙しかったが、達成感が大きかった。いくら仕事をしても忙しいとか疲れたとか思ったことはなかった。しかし中学校では仕事量の割りにはストレスばかりがたまる。先生方は給湯室で外部から来た私にはつい愚痴がこぼれる。やめたいやめたい。自分の子どもが学校卒業したら定年前でも学校をやめたい。病気入院が多い。

 これは安倍内閣のときに、指導力のない教員の研修だとか、免許更新だとか、いろいろ法改正をしたけれども、私は現場を知らない机上の空論で、むしろ学校現場を混乱させただけではないかと思っていた。教員が悪いという発想しかない国の教育政策にこそ問題がある。物事の本質を理解していない。