心の故郷は夏目漱石の世界

Fri.June 1.2001

[ハイサーイ!私の徒然草]  


   漱石の作品を読んだのはもう四十数年も昔のことでもあり、何が書かれていたかは私の記憶からほとんど消え去っている。漱石を論じることなどできはしないけれども、漱石の世界は心の奥深くにしみついている。

   私は、遠い昔、夏目漱石の世界に住んでいたような懐かしい気持になる。世の中も、大学も、学生も、学校の先生も全ての原点が夏目漱石の世界にある。他にいくらでも文学作品は読んでいるはずなのに、最後に残ったのは夏目漱石だ。

   私が昔のよき時代というとき、決まって漱石の世界をぼんやりととイメージしている。大学とは小説「三四郎」に出てくるようなところであり、学生といえば主人公三四郎がモデルであり、大学の先生といえば漱石、教師といえば坊ちゃんの姿が浮かぶ。

   小説「三四郎」は明治41年(1908年)9月から12月まで朝日新聞に147回連載されたもので、93年も昔に描かれた世界がこれほどの影響を後世の人間に与え続けているというのも不思議だ。常日ごろはすっかり忘れているが、自分はあたかも幼いころ漱石の小説の中の世界に生きていたのではないか思うくらい懐かしい気がする。その目で現実の世界の流れをずっと追って見てきたから、世の中も、人の心も変われば変わるものだと思う。


東北大学附属図書館 夏目漱石ライブラリ