いやぁよ、卒業しますよ
〜福岡高校の定時制は授業の出欠には厳しかった〜
| [ハイサーイ!私の徒然草] | 【定時制高校生の作文】 |
もう6、7年も前の話。体育祭の練習の合間に、来年3月卒業予定の女生徒がたずねもしないのに次から次に話をした。彼女は昼間の学校に通えない家庭の事情があったわけではない。姉妹兄弟は全日制の高校に進み大学にも進学していて、両親は彼女に昼間の学校に行くようにすすめた。 しかし全日制の高校には行きたくない、早く働きたいという理由で定時制に入学した。あっけらかんとした明るく素直な娘である。昼間は仕事をして、夕方から定時制に通って、学校が終わるとまた飲み屋でアルバイトである。 あたしが家を出るとき、お母さんが言うとよ、「エイズにかかるよー!」って。でもあたしそんなこと絶対にしていないもん。飲み屋でお客さんから送ってあげようと誘われて、送ってもらったらホテルに連れていかれることは分かりきっているから、どうやってうまくかわすかだそうだ。裏口からこっそり帰らしてもらったりいろいろだそうである。 ところで、福岡高校定時制は入学の条件は厳しかった。中学校の成績がオール1であっても勉強をする覚悟がちゃんと出来ていれば合格である。進級、卒業の条件も厳しかった。出席日数、出席時間数には厳しかった。出席すればいいというものではなくて、授業に5分以上遅れたら欠課扱いになる。その日何科目か授業を欠席すれば1日欠席になる。だからその遅刻扱いか欠課扱いかの境目で時々教師と生徒の間で秒単位の対決になる。 今の定時制の生徒は昔の定時制の生徒とは違って定時制に来た事情はいろいろである。今は就職しようとすれば高校卒以上という条件が付いていることが多いから、それも定時制にやってきた理由のひとつである。しかし単に資格がほしいだけの人たちは学校には早く来ていても教室には入らないで時間をつぶして、授業の終わりがけになって教室に入ってくる。それを放置すれば授業にならないのです。 退職後講師で勤務した通信制ではチャイムがなり終わった時点でドアが閉まる。だから生徒は遅れないように駆け込んでくる。通信制ではスクーリングに何時間出席したかが重要条件だから出欠確認には間違いが許されない。とにかく3000人も4000人も生徒がいて、クラス単位で授業をしているわけではないからその時その時出欠確認には神経を使う。 しかし出席カードを忘れたとか、後になって、出席していたのに欠席扱いになっていたと言ってくる生徒もいるから、授業の前に出席生徒の人数を数え、生徒が授業が済んで教室を出るときに出席カードを提出する。ひとりひとり受け取り、枚数の確認、その場でホッチギスで止めて、すぐにコンピュータに入力する。試験前に出席次数が足りた足りないの時期になると必ずトラブルがあるから、出席カードはそのまま保管する。 福岡高校の定時制では、全日制の学校と違って勉強する覚悟が出来さえすれば再入学の道がある。だから、出席日数が足りなくなったときはもちろん、出席状況が悪いとき、真面目に修学しないときは、「勉強する覚悟ができたらもう一度来なさい」と自主退学を勧告した。そういう試練を与えればこそ授業だって成り立ってきた。試験の成績はいい。全日制の学校で苦労したような点数のつけようがない答案で苦労することはなかった。 入学させた以上全員卒業させるというのは理想である。しかしきれい事ばかり言っている定時制高校では全く授業が成り立たず、生徒は教師のいうことを全く聞かないという話も聞いていた。福岡高校定時制では授業が成り立たないなどということはなかった。県教育委員会の学校訪問のときに、主任指導主事が私に「ここでは授業は成り立っていますか?」とたずねた。「ここでは授業ができないような状況はない」と答えると、「よそはどこも大変ですよ」といった。 ところで、この女生徒、まだ9月の半ばなのに「あと1科目1時間でも欠席すれば来年予定通り卒業できんとよ〜」という。私は「あと半年もあるとよ!冬になれば風邪も引くだろうし病気もするだろう。そりゃ卒業はちょっと無理じゃないの?気が遠くなるような話だね。無理に来春卒業する必要ないじゃないの?もう1年ここに来たらどうね?」と言った。「いや〜ぁよ!来年卒業しますよ」といった。 彼女、年が明けてから風邪を引いた。熱を出してきつそうだった。しかし這ってでも学校に来た。めでたく卒業した。その執念はすごかった。 |